『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞した川上未映子さんの『夏物語』を読み終えました。
・生まれてくること
・生きていくこと
その意味を考えさせられる感動作品でした。
夏物語
2019年『文学界』にて前編・後編の2回に分けて掲載後、2019年7月に文藝春秋より単行本が刊行
☆第73回毎日出版文化賞 受賞
☆2020年本屋大賞ノミネート(最終結果で7位にランクイン!)
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『夏物語』のあらすじ
※未読の方にネタバレしないよう”超簡単あらすじ”で失礼します
38歳の夏子は、自分の子どもに会いたいと思うようになり、パートナーなしの妊娠&出産をめざしていた。
そんなとき精子提供で生まれ、父親のことを知らない逢沢潤という男性と出会う。
彼は顔も知らない父親のことを探しているのであった。
『夏物語』が問いかけるテーマとは?
『夏物語』40か国以上で翻訳されているそうです。すごいですね!
いろんな人種の人に受け入れられたこの小説が問いかけているテーマとは?
生命倫理について
あなたは非配偶者間人工授精(AID)をご存じですか?
不妊の夫婦や同性カップルが子どもをもつための方法のひとつ。
具体的には第三者の精子で妊娠→出産する。
実は私はよく知りませんでした・・・
AIDには大小さまざまな議論があるようです。
そのひとつは、生まれてきた子どもは自分の生物学上の父親を知ることができないこと。
自分がAIDで生まれた事実を知らずに育ち、親の死に目などで突然知らされ衝撃をうけるケースが多いようです。
自分の半分は何なのかわからなくなり、深い喪失感や苦痛の中でその後の人生を生きていかねばなりません。
本小説の登場人物の中には、AIDに賛成する人もいれば反対する人も出てきます。
産むか産まないか自分で決められる親、生まれるかどうか自分では決められない子
小説内で、AIDにより誕生した女性が言います。
「深い森の奥に十人の子どもたちが眠っていてそのうちの一人は生まれてきたら苦しむとして…
そんな賭けに勝つと信じて子どもたちを起こすような、子どもを産むことは一方的で暴力的な行為。もう誰も起こさないで。」
生まれることは絶対に自分では決められなくて、100%親の勝手だよな。
それはそう。
子は親を選べないばかりか、勝手に誕生させられて、中には生まれてきて良かったと思えない人生を送る人もいて。
死ぬことだけは自分で決められるけど。
(出典:夏物語(川上未映子著))
究極の考えも登場します。
「生まれた子が幸福になるか、不幸になるかは分からない。だから子を産むことは『賭け』である。
子を産まなければ少なくとも不幸を生み出すことはない。
だから子を産まないことが正しい。」
みんなが生まれてこんかったら、なにも問題はないように思える。
誰も生まれてこなかったら、うれしいも、かなしいも、何もかもがもとからないのだもの。
なかったんやもの。
(出典:夏物語(川上未映子著))
どれだけ考えても答えは出ない・・・
それでも深く考えさせられます。
自殺は人生からの究極の避難なのか?
大人はなぜお酒を飲むのか?と子どもに尋ねられ・・
人ってさ、ずうっと自分やろ。
生まれてからずっと自分やんか。
そのことがしんどくなって、みんな酔うんかもしれんな。
生きてたらいろんなことがあって、そやけど死ぬまでは生きていくしかないやろ、
生きているあいだはずっと人生がつづくから、
いったん避難しなもうもたへん、みたいなときがあるんかもな
避難ていうのは、自分からかな
自分のなかにある――時間とか、思い出もひっくるめたもんから、避難するんかもしれん。
なかには避難じゃ足りひん、もう戻ってきたくないって人もおって、自分で死んでしまう人もおるな
(出典:夏物語(川上未映子著))
「時間とか思い出とかも全てひっくるめた自分」から「自分」を避難させるということか?
悲しくてたまらなくなってきました・・・
さいごに
川上未映子さんの生の声を紹介してくれている記事を見つけました。
『夏物語』の理解が深まる記事だと思うのでご紹介します。記事はコチラ
川上未映子さんの他の小説も読んでみたいと思います。
最後までおつきあいくださりありがとうございました。