・社会生活に疲れた
・自分と社会とのズレを感じる
・生きづらさを感じる
・日常に追われ余裕を失っている
・将来が不安
そんな悩みを軽くしてくれる本に出会いたい方に
芥川賞受賞作「スティル・ライフ」の中で、私の心が救われたポイントを2つに絞ってお話ししたいと思います。
共感してくださる方がいらっしゃるとうれしいな~。
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『スティル・ライフ』感動の冒頭2ページ
この小説の冒頭です。
この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。
世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。
きみは自分のそばに世界という立派な木があることを知っている。それを喜んでいる。世界の方はあまりきみのことを考えていないかもしれない。
でも、外に立つ世界とは別に、きみの中にも、一つの世界がある。きみは自分の内部の広大な薄明の世界を想像してみることができる。きみの意識は二つの世界の境界の上にいる。
大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。
たとえば、星を見るとかして。
二つの世界の呼応と調和がうまくいっていると、毎日を過すのはずっと楽になる。心の力をよけいなことに使う必要がなくなる。
水の味がわかり、人を怒らせることが少なくなる。
星を正しく見るのはむずかしいが、上手になればそれだけの効果があがるだろう。
星ではなく、せせらぎや、セミ時雨でもいいのだけれども。
(出典:スティル・ライフ(池澤夏樹著))
どう思われましたでしょうか?
私は衝撃をうけました・・・
「外の世界」と「私の内なる世界」
2つの世界の呼応と調和をはかるのが苦手だったから、うまくいかないことが多かったのかな。時間は戻せないのが悲しい。
感動ポイント①:外と内の世界を別物として見ると楽になれる
社会に合わせることが正しいと信じ、自分の心に負担を強いてしまうことが生きづらさにつながるのかもしれません。
外の世界と内なる世界を別物としてとらえてOKなんだ!という価値観に救いを感じます。
本来人間の手に届かない領域があるという事実に気がつかせてくれました。
なりゆきに任せるしかないのに悩むなんて、私は無意味なことをしていたのか・・・
小説の中で主人公は、仕事について選択します。
十年先に何をやっているかを今すぐに決めろというのはずいぶん理不尽な要求だと思って、ぼくは何も決めなかった。社会は早く決めたやつの方を優先するらしかったが、それはしかたがのないことだ。ぼくは、とりあえず、迷っている方を選んだ。
(出典:スティル・ライフ(池澤夏樹著))
これからは現実と自分の内面をどう繋げていくかを考えていこうと思いました。
感動ポイント②:自分の立ち位置を変えると感じ方が違ってくる
主人公は雪の中でこう感じます。
雪が降るのではない。雪片に満たされた宇宙を、ぼくを乗せたこの世界の方が上へ上へと昇っているのだ。静かに、滑らかに、着実に、世界は上昇を続けていた。ぼくはその世界の真中に置かれた岩に坐っていた。岩が昇り、海の全部が、厖大な量の水のすべてが、波一つ立てずに昇り、それを見るぼくが昇っている。雪はその限りない上昇の指標でしかなかった。
(出典:スティル・ライフ(池澤夏樹著))
雪が降る空に吸い込まれそうな感覚がしませんか?
何かに追われる心境のとき、余裕を失った私の脳味噌は柔軟性がなくなり固まります。
そんなときはろくな決断ができません。
しかし視野を広くもち、自分の立ち位置を変えるだけで、周囲の見え方や感じ方がまったく違ってくるんですね。
自分を客観視する大切さを教えられました。
さいごに
「スティル・ライフ」は30年ほど前の小説です。
前回読んだときは正直よく理解できなかった記憶がありますが、今回はすこぶる感動しました。
年齢や精神状態で感じ方が変わる本だと思います。
何かに迷ったり苦しくなったときに再読してみようと思います。
そのほかのおすすめポイントとして
✅文章の美しさを味わえる
✅理系の世界を堪能できる
2つを追加してこの記事を終えようと思います。
池澤夏樹=理系の村上春樹とも言われるそうです。
最後までお読みくださりありがとうございました。