安宅和人氏のベストセラー『シン・二ホン』を読みました。
- 読者が選ぶビジネス書グランプリ2021 総合グランプリ受賞
- ビジネス書大賞2020 特別賞(ソーシャルデザイン部門)受賞
- ITエンジニア本大賞2021 ビジネス書部門 ベスト10
- 累計15万部突破
副題は ”AI×データ時代における日本の再生と人材育成”
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急速にデータ×AI化している世の中
高校の授業で産業革命について教わりました。
18~19世紀、手工芸や農業が機械に換わったり、石炭をエネルギーとして使うようになりました。
今、世界では当時のような、というかそれ以上の速さで技術的革新が起きています。
データ×AI化です。
データ×AI化で可能になったことは?
【例】
- 顔画像だけで双子まで明確に判別する
- 世界最高レベルの医者と同レベルで皮膚がんの識別を行う
- 動画を読唇する
- 歩き方から人物が誰か、認知症に罹患しているかを判定する
- 200メートル離れていても心臓の鼓動で人を判別する
5年後、可能なことがもっと増えているのでしょうね。
怖いようなワクワクするような気分です。
日本はオワコン
ワクワクしたばかりなのに奈落の底!?
安宅氏によれば、日本は変化に取り残されてしまった国なんだそうです。
はっきり言って、日本はオワコンなんですって!
日本のオワコン度は?
GDP
4位(1989年)→現在30位
中国には軽々と抜き去られた。
世界中の国がどこも伸びている中、日本だけ伸ばせていない状態が25年も続いている。
まもなくドイツにも並ばれる予定。
企業ランキング
上位の多くが日本企業だった(平成の始め)→現在中国はおろか韓国にも大敗
日本はぶっちぎりの一人負け状態!
「失われた25年間」と言われているんだそうです。ショック⤵⤵⤵
ないないづくしの日本
かつてはJapan as No.1なんて時代もあったのに・・・
こんなに落ちぶれて(?)しまった原因を知りたくなりますよね。
安宅氏によれば、日本は戦いたくても武器がない「ないないづくし」状態だそうですよ!
ないないづくし日本
データ×AI時代においてのビジネスはビッグデータ、データ処理力、人材がカギなのに、日本にはどれもそろっていません。
①データもない
②処理力もない
③人もいない という状況なのです。
①②③をそれぞれ見ていきましょう。
データがない
✅日本にはYahooという国内最大級のインターネット事業会社があります。
しかし世界に目を向ければ、GoogleやBaiduのユーザー数は10億人前後。
Yahooとは桁が違います。
✅Eコマース分野は楽天が最大ですが、AmazonやAlibabaの規模は桁が違いすぎます。
✅LINEも同様で、WhatsappやWeChatのユーザー数にはかないません。
日本はビッグデータを得る手段がないのです。
データ処理力がない
・AmazonにはAWS
・GoogleにはGCP
日本にはそういったプラットフォームがありません。
(しかも、日本の産業用電気代はアメリカの5~10倍高く、たとえ国産のプラットフォームがあったとしてもコスト的に無理なのです。)
人材がいない
日本はエンジニアや専門家の数が足りていません。
アメリカにはもちろん、中国やインドにも数で負けています。
日本は資源はないけれど、人材は豊富なはず。
私はそう思っていました。
しかし・・・
大学進学者のうち理工系の学生が2割しかいない。
こんなんじゃAI×データ時代を戦うには無理すぎる。
※アメリカは半数以上が理系だそうです。
以上3点をまとめ
要するに日本にはAI×データ時代を戦うための武器を持っていない状態!
各国がミサイルやマシンガンで戦っている中、日本は空手だけで戦場に向かっているようなものなのだそうです。
参考
そもそも日本の大学はデータサイエンスの教育課程自体が少なすぎる。
その結果、日本では理系の院卒を除けば、高等教育を受けたはずの人が基本的なスキルを身につけないまま社会に出ている。
【日本の新卒層の課題(例)】
・指数と実数の使い分けができない
・数字を並べることと分析の違いが分かっていない
・軸を立てるということの意味が分かっていない
・平均を鵜吞みにする
・情報処理、プログラミングについての基本的な理解がない
(出典:シン・二ホン(安宅和人著))
老害!ジャマおじ・ジャマおばが日本をさらに衰退させる
ジャマおじ=ジャマなおじさん
ジャマおば=ジャマなおばさん
激変する時代を生きる人材は、スキルの刷新が不可欠です。
しかし、既得権益を守るための規制を作り、産業の刷新を止め、AIネイティブな世代を引き上げることもなく、日本をさらに衰退させてしまう中高年が多く存在するのだそうです。
ジャマおじ・おばは即追放!!
日本には埋もれてしまっている人材が多い
日本には埋もれている才能が多いそうです。
たとえば
✅女性
✅シニア層
女性
日本は男女平等度を示すジェンダーギャップ指数が153カ国中121位。正真正銘の「女性活躍劣等国」です。
確かに、仕事をやめるかセーブして家事・育児をしている優秀な女性ってたくさんいますね。
シニア層
60~65才で定年退職を迎える方が多いですよね。
その一方で日本は世界屈指の長寿国。
特別な大病がない限り、80歳近くまで元気な人が多いという統計があります。
まだ全然現役でやれる人、しかも経験値の高い人が多いシニア層は、ホントもったいない人材です。
参考
男の平均寿命は81.25年、女の平均寿命は87.32年
最頻死亡年齢(もっとも死ぬ人が多い年齢)は男性88歳、女性92歳
(2019.7厚生労働省簡易生命表)
それでも日本は再び蘇ることができる
ゲームチェンジがすでに起こっているにもかかわらず日本だけがそのゲームに参加していない、あるいはゲームが始まっていることにすら気が付いていない。
そんな現状の日本ですが、再び蘇ることができると安宅氏は言います。
その根拠は?
蘇る根拠①:日本は出口産業に強いから
技術革新には3つのフェーズがあると安宅氏は言います。
第1フェーズ:新しい技術やエネルギーがバラバラと出てくる段階
第2フェーズ:この新しい技術が実用性をもつようになり、さまざまな世界に実装される段階
第3フェーズ:この新しく生まれてきた機械や産業がつながりあって、複雑なシステムが次々と生まれる段階
日本という国は第2&第3フェーズにすごく強い国なんだそうです。
たとえば、
・自動車
・家電
・カメラ
・新幹線
・ファミコン、スパコン
・ポータブルオーディオ
どれも日本がこのフェーズで世界を牽引してきました。
つまり、日本は0→1を作り上げる(第1フェーズ)実績はないが、1→10、10→100(第2・第3フェーズ)で圧倒的な力を持つ国なのだと安宅氏は言います。
日本が蘇る根拠①
出口産業に強い日本は、AI×データ時代においても第2・第3フェーズできっと再生できる
蘇る根拠②:日本人は妄想力のかたまりだから
日本人ほど幼いころから妄想力を鍛えている国民はいない、と安宅氏は言います。
たとえば、鉄腕アトム・ドラえもん・ワンピース・ポケモン・・・
こんなものあったらいいな♪
こんなことできたらいいな♪
妄想のかたまりです。
日本が蘇る根拠②
AI×データ時代に必要な人材とは、習ったことをきちんとやるマシン的な人間ではない。
目に見えない新しい価値を生み出せる人間、素晴らしい世界を描いて領域を超えたものをつなぎ合わせられる人間だ。
日本人の強みである「妄想力」がいっそう大事になってくる。
未来をつくるカギとなるのはどんな人?
ふつうの人とは違う「異人」
これからの時代のカギになるのは、誰もが目指すことで一番になる人ではなく、
あまり多くの人が目指さない領域あるいはアイデアで何かをで仕掛けられる人だと安宅氏は言います。
一言でいえば、ふつうの人とは明らかに違う「異人」が求められるのだと。
新しい時代のカギを握る「異人」とは?
● あまり多くの人が目指さない領域のいくつかでヤバイ人
● 夢を描き、複数の領域をつないで形にする人
● どんな話題でもそれぞれ自分が頼れるすごい人を知っている人
これまでの時代では、「変わった人」「秩序を乱す人」と言われ潰されてきたような人がカギを握るのです。
異人を守るためには?
まずは軍事教練の名残である「気をつけ」「起立」「休め」「前ならえ」「組体操」を廃止すべきだ。
このような訓練や型紙化を普通に行っているのはおかしい。
この悪気のない行動が大切な「異人」たちを排除するのだ。
【余談】スティーブ・ジョブズの言葉
「大学を中退して潜り込んで聴いたカリグラフィーの授業の経験がなければ、マッキントッシュの美しいフォントは生まれなかった。経験がどこにどう生きるか分からない、それがいつかつながると信じて生きよ」
(2005年スタンフォード大学でのスピーチより)
全く違うところで得た知識が他の場所で使える例だけでなく、バラバラに聞いた知見をつなぎ合わせ、普通には考えられていない意味合いを考える例
人として魅力(チャーム)がある人
社会で成功するかどうか、おもしろいことを仕掛けられるかどうかは、その人に魅力(チャーム)があるかにかかってくる、と安宅氏は言います。
チャーミングでない人が、人として愛され、人から信頼を得、成功することはむずかしい。
チャームがなければ何か仕掛けようと思ってもだれも力を貸してくれないし、人脈を作ることができないのだと。
チャームとは?(全11項目)
・明るさ、前向きさ
・心の強さ
・信じられる人であること、人を傷つけたりダマしたりしないこと
・包容力、愛の深さ、心の優しさ
・その人らしさ、真正さ、独自性
・エネルギー、生命力
・リスクをとって前に進める提案力、実行・推進力
・建設的な発言
・協力し合う、助け合う人柄、耳を傾ける力
・ユーモア、茶目っ気
・素敵な裏表のない笑顔
11全部持っている人に会ってみたい。一瞬で惚れてしまいそう
AI×データ時代を生きていく子どもに必要な力は?
安宅氏はは国語と数学の力を再構築する必要があると述べています。
国語:「空気を読む国語」から「理解・構成・表現の三学を学ぶ国語」へ
これまで日本の国語教育は、筆者の述べたい事柄の推測や理解、感想などが中心でした。
テストによく出ました。
しかしAI×データ時代に必要なのは、推測とか感想ではなくて
✅分析的、構造的に文章を理解し課題を洗い出す
✅筋道立てて考えを整理する
✅明確に考えを人に伝える
読書感想文の宿題はなくなっていくのかな?
数学:数学の基礎力をつける
日本の中学生は、世界的にみて数学のレベルは高いのに、数学が好きな子の割合が最低レベルなのだそうです。
理系の学生が少ない原因はコレかも?
まずは子どもたちに数学を好きになってもらわなければなりません。
AI×データ時代では数学の力がどうしても必要なのです。子どもたちよ、ガンバレ!
AI×データ時代の未来にむかって国に求めることは?
新しい時代にむかって国にも変わってもらわなければなりません。
とくに以下の2点です。
教育と科学技術開発への予算を増やす
学生ひとりに充てられている予算がアメリカのトップ大学と日本のトップ大学を比較すると桁が1つ違うほどの差があるそうです。
特に日本の大学でPhDまで進むとなると莫大なお金がかかり、進学したくても経済的にできないケースも多いらしいです。
解決策として、国の財源で学費を補助する必要があると安宅氏は主張します。
また、科学技術開発の資金も不足しています。
たとえば研究者に必要なハイエンドなコンピュータを用意したくても、現在支給されている水準の金額では全然足りないそうです。
道具がなきゃ戦えませんよね。
データ×AI時代の拡大に備えて、世界的な競争力を失わないためには、教育と科学技術開発に少しでも投資をして未来にベットする必要があると安宅氏は主張します。
国全体を家族として考える
国にお金はあるのです。
ただリソース配分が問題なのだと安宅氏は言います。
現状では国のお金の多くが医療費や年金の形でシニア層に配られています。
その3%を若者への投資や科学技術開発などにかけてほしいだけなのだ、と安宅氏は述べています。
今の日本は?
祖父母はおかず付きでご飯を食べ、両親には少しのお小遣いがあり、子どもはめざし1匹すらない状態
☝この例え、分かりやすいですね。
まとめ
本書は400ページを超える大著で、大変読みごたえがあります。
広範なテーマを扱っており、この記事中に扱えていないテーマもありますことをご容赦ください。
今後の日本が歩む道を考える機会を与えてくれる良書だと思います。
データが満載で、すべての主張に説得力を感じます。
未読の方、一度お手に取ってみてはいかがでしょうか?
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今回は以上です。
ありがとうございました。