芥川賞受賞作、高山羽根子さん著「首里の馬」
心が揺さぶられ、涙と共に読み終えました。
まず初めに、高山氏の受賞のことばより抜粋
この大変な、たいていの場合においてひどく厳しい世界は、それでも、生き続けるに値する程度には、ささやかな驚異に溢れていると思うのです。ときにはびっくりするくらい美しかったり、胸が締め付けられるくらい愛おしかったり、思い出していつまでも笑ってしまうくらいこっけいだったりします。この、どれだけ書いても書き足りないくらいのことについてを、私はずっと書き続けていきたいのです。
「生き続けるに値する程度に」わが身にパワーをくれる日常の「ささやかな驚異」
私が日ごろ無意識に感じているのに言葉にできなかった事柄を、高山氏が「首里の馬」で表現してくれた・・・
その胸打つ感動を記事にしたいと思います。
共感してくださる方がいるといいな~という願いを込めて。
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「首里の馬」のあらすじ
主人公の未名子は沖縄に暮らしています。
彼女はそこで2種類の仕事をしています。
1つは、オンラインで遠く世界の果てにいる孤独で知的な外国人に、日本語でなぞなぞを出題する仕事。
もう1つは、沖縄の歴史資料を記録保存する郷土資料館でインデックスカードの整理をする仕事。これは未名子が中学生の頃から無給で続けています。当時の彼女は今でいう不登校でした。
昔、艦砲射撃で人も動物も地形さえも変わってしまった沖縄。戦前の文化や人々の姿は、生き残った人の記憶に頼るしかありませんでした。
未名子はそれらをデータ化し、将来役立つかどうかは抜きに、アーカイブし残そうとしています。
そんな未名子の家の庭に、ある台風の夜、宮古馬が迷い込んできます。
宮古馬は宮古島で飼育されてきた琉球競馬の種類です。琉球競馬とは、脚の運びや姿勢の優雅さなど美を競う競技で、昔は栄えていましたが昭和になると徐々に衰退し、戦争を境に途絶え・・・・
「首里の馬」の感動ポイント
喪失と継承
沖縄は戦時中、最も激戦が起こった土地です。
戦火の中ですべてが失われました。
人々の暮らしはおびただしい砲弾などによって一瞬にして吹き飛びました。
建物ばかりか地形さえ変わってしまい、もう生きていくことなんかできそうにない風景の中で、人々はどう絶望したのだろう。想像だにできません。
戦前のあらゆる記録も消失しました。
今の沖縄の町並みはほぼすべて戦後に造られました。記録が消滅したため住民の記憶を頼りに造られたそうです。
沖縄の悲しい歴史と、それによって失われた美しい文化&人々の暮らし
喪失を経験したのち、再びかつての暮らしを取り戻そうとした人々のの悲しい前進
「未来に再び、悲しい出来事が起こらないとは限らない。そのときの人々が元通りにしたくても元の状態がわからないと困るから、過去と現在の情報すべてを未来に残したい。」
未名子のけなげさに心を打たれます。
家に迷い込んだ宮古馬は、失われた沖縄の美しい文化の象徴として描かれていると感じました。
孤独と繋がり
これから読む方のためにネタバレは避けるように書きます。
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登場する人たちは、絶望するような孤独な人ばかりです。
私ならとても生きていけないと思うような孤独です。
そんな状況でも、オンラインのつながりの中に小さな希望を感じながら生き続ける人たちの姿に、完全な絶望など存在しないという筆者の訴えを感じました。
この人たちに幸せな瞬間が多く訪れますように、と静かに祈りたい気持ちになりました。
「首里の馬」の続編が読みたい
小説のおしまいは希望を感じる終わり方でしたが、続きが気になる~~~
未名子とヒコーキのその後が知りたい
未名子は2つの仕事をいっぺんになくし、どうやって生きていくのか?
馬のヒコーキの運命は❓未名子と一緒に暮らすのか?
その後が知りたくてたまりません。
最後のクイズの答えが知りたい
未名子がみんなに最後に出したなぞなぞの答えが知りたい・・・・
「この世界のある一つの場所を、3つの単語で紐づけるやり方」
それは暗号にも使える上に、無限に複雑化することができる・・・
この方法もくわしく知りたいです!
読後数日経っても「首里の馬」の深い余韻に浸っています。
この感動をたくさんの人に味わってほしくて記事にしてみました。
最後までお読みくださりありがとうございました。