林真理子さんの『小説8050』
「80の親と50の子」が登場するのではなく、「50の親と20の子」の話でした。
ひとことで言えば、本書は警告の書。
家庭内の問題を先延ばしにしてはいけない。
先延ばししているうちに事態は悪化の一途をたどり、本当に「8050問題」になってしまうのだ。
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『小説8050』のあらすじ
従順な妻と優秀な娘にめぐまれ、完璧な人生を送っているように見える大澤正樹には秘密がある。
有名中学に合格し、医師を目指していたはずの長男の翔太が、七年間も部屋に引きこもったままなのだ。夜中に家中を徘徊する黒い影。次は、窓ガラスでなく自分が壊される――。
「引きこもり100万人時代」に必読の絶望と再生の物語。
(出典:新潮社hp 小説8050特設サイト)
※「引きこもり100万人時代」とありますが実際はもっと多く、内閣府が発表した最新の調査結果(2023年3月31日公表)によると約146万人だそうです。2022年度「こども・若者の意識と生活に関する調査」
『小説8050』主人公の家族
(夫)大澤正樹 50代の歯科医。息子の翔太は歯科医ではなく医師にしたくて、中高一貫校へ進学させる。
(妻)大澤節子 専業主婦
(長女)大澤由依 早稲田出身、一流会社に就職。引きこもりの弟のせいで結婚話がスムーズに進まないと思っている。
(長男)大澤翔太 ←20歳、7年間引きこもり中
息子が引きこもりになったのは、だれのせい?
夫婦は口論します。
【妻の言い分】
「あなたのそういうところがいけなかったんじゃないの。いつだって自分はエラい、自分の言うことは正しい、っていう態度だから、翔太はそれに耐えられなかったのよ」
【夫の言い分】
「だいたい子供の教育なんて、母親の責任だろ。お前はその点失格だったんだ。そのことを素直に認めたらどうなんだ
(中略)
お前は専業主婦っていう、恵まれた立場にいたんだ。充分に子どもと向き合う時間もあったんだ。それなのに息子がまともな道から脱落するのを見落としたんだよ」
(出典:小説8050(林真理子著))
古臭い価値観を信じて疑わず、自分なりの論理と正義を声高に叫ぶ夫
VS
長年積み重ねてきた夫への恨みを感情的に爆発させる妻
なんだかな~。親がこんなんじゃなぁ~。
モヤモヤして仕方がありませんでした。
夫婦の考えのズレ
息子が引きこもるようになって以来、夫婦の考えがずれていたせいで溝がどんどん深くなっていったように感じます。
妻の考え:今の息子の気持ちを大事にしたい
息子を腫れ物に触るようにオドオドと接します。
その結果引きこもり問題がどんどん先送りされます。
夫の考え:自分は仕事をして家にお金を入れているのだから、家庭の子育ては母親の仕事だ
当事者感に欠け、見て見ぬふり!?
超過保護な母親 VS 超高圧的な父親
間に挟まれた翔太君が気の毒でなりませんでした。
問題に向き合う中で考えが変わっていく
息子の引きこもりを妻のせいにしてきた夫でしたが、次第に考えが変わっていきます。
引きこもる息子の部屋のドアの前でこう語るのです。
お前をちゃんと育てたのか、って何度も聞かれた。だけどそんなこと聞かれて、はい、って言える親が何人いるっていうんだ。みんなおっかなびっくり、迷いながら、自身があるふりして、時には怒鳴ったり、機嫌撮ったりして子どもを育てているんだ。なあ、翔太そうだろう。
お前がこうなったのは、俺たちのせいかもしれない、だけどそれだけじゃないはずだ。なあ・・・・7年前にいったい何があったんだ。お願いだ、ちゃんと話してくれないか・・・・
(出典:小説8050(林真理子著))
しっかりと抱き締めたことがあったろうか。
泣きやまなかった時に、激しくったことがある。
自転車に乗るのを諦めようとした時、「お前、それでも男か」と怒鳴った。倒れても何度も載せようとした。
ゲーム機を取り上げたのは、宿題をしなかったからだ。
ああした小さなことが積み重なって、やがて大きな出来事へとつながったのか。自分はそれほどいけない父親だったのか。
(出典:小説8050(林真理子著))
自分の子育ての、どこが間違えていたのか?
悩みもがく姿が描かれていて、胸が痛みます。
さらにスゴイ展開が!!
未読の方のために詳細は省きますが、「裁判」とか「とびおり」とか・・・
すごい展開が続くのです。
この家族はどう決着を迎えるのでしょうか?
ハラハラする時間を保証します(笑)
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今まで林真理子さんの小説はたくさん読んできましたが、本書は私が知っている林さんの小説とは全然違ったものでした。
林真理子さんの社会派作家の面を見せてくれる『小説8050』は、子をもつ、またはこれから子をもとうとしている方にとくにおススメしたいです。
『小説8050』林真理子さんが読んだ参考図書は?
本の最後に紹介されていた参考図書です。
参考図書①:心に狂いが生じるとき 精神科医の症例報告(岩波明著)
現役の精神科医によって書かれた、心の病と精神の健康についての本です。
不安・うつ・パニック発作・強迫観念・食欲不振・睡眠障害・アルコール中毒などの原因、症状、予防、治療について、専門家の立場から患者の具体例を挙げて述べられているので、とてもわかりやすかったです。
また、日本はなぜ自殺者が多いのか、日本という国が抱える問題点についても書かれています。
参考図書②:「子供を殺してください」という親たち(押川剛著)
衝撃的なタイトルですよね。
なぜ「子供を殺してください」というまで追いつめられてしまうのか?
自立・更生支援施設をなさっている専門家が、実際の事例をあげながら、問題の本質に迫ります。
⇩コミック版もあります⇩
子供は、「対応困難な問題を繰り返す」という形で、親に自分の「心」を突きつけているのです。こうなるまで気がつかなかった、子供の「心」の痛みを受け止めてください。問題から目をそらしたり、子供の「心」を縛ったりするのではなく、子供を一人の人間として尊重する気持ちを持ってください。
(出典:「子供を殺してください」という親たち(押川剛著))
現在私のところには、子供が三十~四十代、その親が六十~七十代という世代からの相談が殺到しています。この世代の親は、これまで経済活動や生活環境の向上にいそしんできて、経済基盤や体裁は整っていても、人間力・親力のないことが多く、精神疾患を理由にひきこもる子供に対して、なんら親らしい言葉かけや行動をとれずにいます。
(中略)
今の家族の姿こそが、長年の積み重ねの結果であることを忘れないでください。親が表面的な事象にとらわれ、子供に対して真摯に向き合わず、温もりや人間味に欠けた育て方をすれば、それは問題行動として跳ね返ってきます。
(出典:「子供を殺してください」という親たち あとがき(押川剛著))
今回は以上です。ありがとうございました。