横山秀夫さんの新刊「ノースライト」
「64」以来約6年振りの小説に、新しい横山秀夫を感じました!
その魅力とは?
これから読む方のためにネタバレしないように気をつけます。
Amazonで”聴く読書”をしてみませんか?
通勤・通学中やウォーキング中、家事をしながら、時間を有効活用できて便利!
今なら
・30日間無料
・12万冊以上が聴き放題
・いつでも退会可能
横山秀夫『ノースライト』のあらすじ
一級建築士の青瀬は、バブル崩壊後に仕事がなくなり、妻との関係も悪くなり離婚。
現在は元同僚が経営する建築事務所に雇ってもらっているが、仕事への情熱はすっかり失っている。
一人娘とは月に一度だけ会う。
ある日、吉野という夫婦が青瀬の元にやってきて、家を依頼する。
「すべてお任せします。青瀬さん、あなた自身が住みたい家を建ててください」
青瀬は渾身の思いで「北向きの家」を建てる。
吉野夫婦は完成した家を大変気に入った様子だった。
しかし、しばらくして青瀬が吉野邸に行くと、もぬけの殻。
生活した気配すらない。
吉野一家とは連絡が取れない。
蒸発してしまったらしい。
いったいどこへ行ってしまったのか?
家の中には唯一、ドイツの名建築家タウトの作と思われる椅子だけが在った。
小説が進むにつれ、真相が次第に明らかになっていきます。
一気読みしたくなるかも。
横山秀夫『ノースライト』の感想
「64」以来久しぶりに読んだ横山小説。
「64」のイメージで読み始めると全く違う、「新横山」小説だと思いました。
どんなところが?
4つに絞ってお話しさせていただきます。
刑事も新聞記者も登場しないミステリーが新鮮
「横山秀夫といえば警察小説」というのが世間一般のイメージでしょう。
これまでの横山小説のイメージ
・刑事や新聞記者が登場。ほかにも多くの登場人物がいて、名前を覚えるのが大変。
・殺人が起きたり、悪役・嘘つきがいたりするので、暗い雰囲気の場面が多い。
・男性的。物語を読み進める側にもエネルギーが必要。
・怒涛の展開になる。
・ドキドキの謎解き
しかし「ノースライト」には、このイメージを良い意味で裏切られるのです。
ノースライトは?
・刑事や新聞記者は出てこない。
・登場人物はそこそこ人数がいるけれど、主人公とのかかわりや説明が丁寧なため名前を覚えやすい。
・家とは?家族とは?読者にやさしく問いかけてくれる。
・大切な人やものを失った人間が再生する、あたたかいヒューマンドラマの要素大
・ミステリー要素は健在。最後までどうなるのかわからないドキドキ感は十分味わえる。
・ラストが最高!いろんな点と点が繋がり、真相が明らかになる最後は感動!
殺人がないミステリーに女性の私はすっかり虜になりました。
来し方行く末を思う
登場人物は不器用な人が多いのです。
たとえば
✅愛情や友情の伝え方が下手なために誤解されてしまう。
✅過去を消化しきれず後悔が消えない。
✅嫉妬・未練などマイナスの感情を持て余している。
全部自分にあてはまるかも・・・
心の機微の描写が丁寧なので、私はぐっと感情移入してしまいました。
●過去に自分が関わった人々との関係
●現在自分が関わっている人々との関係
その関係があったから、今の自分がある。
人は一人で生きているのではない。
過去と現在に生かされているんだと、しみじみ思いました。
そして未来の自分に繋がっていく・・・
「来し方行く末」という言葉が頭に浮かびました。
「ノースライト」の意味が深い
横山秀夫さん自身が雑誌のインタビューで「ノースライト」の意味を語られています。
【引用】
辞書にはない言葉ですが、昔から自然な光を求めて、アトリエに北向きの窓を設ける画家は多かったそうです。やはり弱っている人には、南や東の光は強すぎる。人の背中を優しく押してあげるには、北の光くらいがちょうどいいと思ったんです
(出典:ENGINE WEB 2019年7月29日付「愛車はスカイラインS54B 新作『ノースライト』を発表した横山秀夫さんインタビュー)
喪失から這い上がろうとする登場人物への愛ですね。
ふと思いました。
北向きの窓からの光を、人間にあてはめたらどうだろう?と。
北からの光、ノースライトのような人になれたら理想だな
穏やかな光で周囲の人々を照らし続けられる人間になるには、私はまだまだ全然修業が足りません・・・・・
建築に興味が湧く
私は建築のことが全然わかりません。
恥ずかしながらタウトという名前は初めて聞きました。
重要な「タウトの椅子」では、え? 建築家って家具も作るの?と・・・
タウトの椅子・熱海の旧日向別邸など実在のものが出てくる場面では、ググりながら読みました。理解が深まりおススメです。
建築がわかる人はもっと面白く読めるのかも。
ちょっとだけ建築に興味が湧きました。
主人公青瀬の父はダム建設現場で働いていて、青瀬一家は現場を転々としながら生きてきました。ダム建設と飯場暮らしのことにも興味が湧きます。
西島秀俊で映画化される
❤西島秀俊さん❤で映画化されました。
まとめ
主人公の青瀬はバブル崩壊後の苦しい時代、いろいろなものを失いながらもなんとか生きてきました。
「すべてお任せします。あなた自身が住みたい家を建ててください。」
吉野夫妻のセリフは建築士なら誰もが言われてみたい、最高の言葉でしょう。
そこから青瀬が再生する物語は、現在コロナ渦で困難と闘う人にとっても希望の光になるかもしれません。
最後までお読みくださりありがとうございました。